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Sweet Song Covers
「忘れられない、あの頃の風景がよみがえる」。
ともに出荷30万枚を超えた「Summer Ballad Covers」「Heartful Song Covers」に続く、大ヒットカヴァーシリーズの第3弾!
日本の音楽史に残る数々の名曲の中から、80年代の楽曲を中心にセレクト。
忘れられない、あの頃の風景がよみがえる。
ともに出荷30万枚を超えた「Summer Ballad Covers」「Heartful Song Covers」に続く、大ヒットカヴァーシリーズの第3弾!
日本の音楽史に残る数々の名曲の中から、80年代の楽曲を中心にセレクト。
忘れられない、あの頃の風景がよみがえる。
[CD+DVD] Sweet Song Covers
2016-03-16
RZCD-86053/B ¥4,180(税込)
Disc1 CD
01
RIDE ON TIME
02
木綿のハンカチーフ
03
SWEET MEMORIES
04
初恋
05
あなた
06
う・ふ・ふ・ふ
07
待つわ
08
ただ泣きたくなるの
09
春よ、来い
10
異邦人
11
秋桜
12
想い出がいっぱい
13
北の国からー遙かなる大地よりー
Disc2 DVD
[Music Video]
・
RIDE ON TIME
[Studio Session Clip]
レコーディング当日、緊張感あふれるスタジオにカメラが入り、
May J. と参加ミュージシャンが作品を創り上げる様子を克明に記録。
アルバム制作の舞台裏を記録した貴重な映像は間違いなくファン必見 !
・
異邦人
レコーディング当日、緊張感あふれるスタジオにカメラが入り、
May J. と参加ミュージシャンが作品を創り上げる様子を克明に記録。
アルバム制作の舞台裏を記録した貴重な映像は間違いなくファン必見 !
・
SWEET MEMORIES
[CD+Blu-ray] Sweet Song Covers
2016-03-16
RZCD-86054/B ¥5,280(税込)
Disc1 CD
01
RIDE ON TIME
02
木綿のハンカチーフ
03
SWEET MEMORIES
04
初恋
05
あなた
06
う・ふ・ふ・ふ
07
待つわ
08
ただ泣きたくなるの
09
春よ、来い
10
異邦人
11
秋桜
12
想い出がいっぱい
13
北の国からー遙かなる大地よりー
Disc2 Blu-ray
[Music Video]
・
RIDE ON TIME
[Studio Session Clip]
レコーディング当日、緊張感あふれるスタジオにカメラが入り、
May J. と参加ミュージシャンが作品を創り上げる様子を克明に記録。
アルバム制作の舞台裏を記録した貴重な映像は間違いなくファン必見 !
・
異邦人
レコーディング当日、緊張感あふれるスタジオにカメラが入り、
May J. と参加ミュージシャンが作品を創り上げる様子を克明に記録。
アルバム制作の舞台裏を記録した貴重な映像は間違いなくファン必見 !
・
SWEET MEMORIES
・
初恋
・
春よ、来い
『Sweet Song Covers』は、May J.の元に集まったJ-POPを代表するアレンジャーや、 ジャズやクラシック・フィールドの凄腕ミュージシャンたちが、音楽を大切にする彼女の姿勢に共鳴して作られたアルバムだ。言い換えれば、現代の歌姫が、J-POPの核を作ってきたミュージシャンたちにすべてを委ねて名曲のカバーをしている。
現在と比べて圧倒的に文 字数の少ない歌詞で、存分に感情を伝えてくれる往年の名曲を、May J.は持てる力のすべてを使って表現する。
選ばれたのは、20世紀を代表するラブソングたちだ。
たとえば「RIDE ON TIME」のオリジナル発表当時、それまでの貧弱なバックに不満だった若いリスナーが、爽快なサウンドに乗って聴こえてくる日本語のポップスにどれだけ心を解放されたか。その解放感を、May J.と いうタイムマシンに乗って追体験するのが『Sweet Song Covers』なのだ。
“J-POP”という言葉は、80年代末に生まれ、1993年頃に一般に定着した。その“J-POP”の萌芽はすでに70年代にあった。当時、歌謡曲や演歌が席巻していた音楽シーンにおいて、ニューミュージックやロック、フォークの若いシンガーソングライターたちが次第に存在感を増してきていた。シンガーとして人気を集めていた彼らは、新しい感覚を持った作家としても注目され、アイドルに作品を提供するケースが増えていった。
今に連なるJ-POPの歴史は、ここから始まったのである。
May J.の『Sweet Song Covers』は、この時代観にピタリと合ったカバーアルバムだ。古くはシンガーソングライターの草分けの小坂明子の73年作品「あなた」から、J-POPの 認知直後の94年作品「ただ泣きたくなるの」(中山美穂)、「春よ、来い」(松任谷由実)までの13曲が収められている。
J-POPの起点となった70年代 から80年代にかけての音楽シーンには、新しい作家とともに、新しいミュージシャンの台頭があった。それまで徒弟制度だったスタジオ・ミュージシャンに代わって、ロックバンドやジャズ&フュージョンシーンから一流のプレイヤーがレコーディングに起用されるようになる。そうした状況になって初めて“サウンド”という言葉が一般リスナーの口にのぼるようになった。
日本に“サウンド”という言葉を定着させた立役者の一人が、山下達郎である。『Sweet Song Covers』の冒頭を飾る「RIDE ON TIME」のオリジナルは、達郎が手塩にかけて育てたドラムス青山純とベース伊藤広規でレコーディングされている。この2人はボズ・スキャッグスのバックで知られたバンド“TOTO”のリズムセクションと並び称された気鋭で、その後もMISIAの初期を支えた名人たちでもあった。
May J.の「RIDE ON TIME」 は、ドラムス山木秀夫、ベース高水健司で、共に80年代初頭のフュージョン界の重鎮である。2人はフュージョンの旗手、渡辺香津美バンドのメンバーだった。またピアノの中西康晴は75年 に17才で“上田正樹とサウストゥサウス”に参加した天才で、達郎や小沢健二のレコーディングも行なっている。
そして面白いのは、ギターの名越由貴夫だ。May J.の「RIDE ON TIME」のイントロで揺れる不思議なギター・サウンドに、「あれっ?」 と思ったリスナーがいるだろう。名越は、椎名林檎やCHARAのバックで活躍するギタリストで、90年代以降に生まれた非常にエッジの効いたプレイを得意としている。普通は達郎のサウンドと相いれないと思われがちだが、聴いてみると実にマッチしていて心地よい。この名越の起用という“冒険”は、ただハイクオリティーだけのカバーではなく、名曲をアップデートする意志をMay J.が 持っているということを示している。このクリエイティブ・マインドが、『Sweet Song Covers』の最大の特長と言っていい。
2曲目の「木綿のハンカチーフ」は太田裕美の76年のヒット曲。はっぴいえんどの ドラマーから作詞家に転身した松本隆の初期の代表作で、遠距離恋愛の男女のセリフが交互に展開される画期的な構成を持つ。今ではあり得ないシチュエーションの、ピュアなラブソングだ。おとなしく田舎で待つヒロインには松本の理想の女性像が反映されているが、歌手の太田はさばさばした江戸っ子気質で、そのギャップが成功につながったと言われている。
巨匠・筒美京平のポップなメロディが、スムーズな男女の歌い分けを助けている。
May J.もこの“歌い分け”に挑戦していて、明るく懐かし い恋愛観を表現することに成功している。
名曲カバーのポイントのひとつは、オリジナルとの距離感だ。オリジナルとすべて同じでは意味がないし、オリジナルと離れ過ぎても楽しみは 減ってしまう。
では『Sweet Song Covers』の場合はどうだろう。サウンドに関し ては前述のように“アップデート”に気が配られている。対してMay J.のボーカルは、独特のポジションを取る。オリジナルのシンガーの魅力と、May J.自身の持ち味の、ちょうど中間に位置しながら、奇跡のバランスで個性を発揮しているのだ。
May J.は非常に耳がいいので、オリジナルそっくりに歌うことができる。彼女はその能力を前提として、歌を組み立てている。たとえば「う・ふ・ふ・ふ」は、オリジナルのEPOにかなり寄せて歌っている。ただし、リスナーが「似ているな」と感じた瞬間、さっと彼女自身の歌い方に戻す。そのタイミングの良さは心憎いほどだ。一方で「木綿のハンカチーフ」では女子パートでは太田裕美に近く、男子パートでは太田と異なるタイプのボーイッシュな発声に切り替 えて自分をアピールする。この独創的なボーカルセンスは、カバーを多く経験するうちにMay J.が身に付けたもので、彼女のオリジナリティの源泉になっている。
「私のものじゃない、私の歌」という今年の彼女のキャッチコピーは、彼女のそうしたカバーに対する姿勢を指している。同時に、名曲たちはMay J.にカバーされることによって、新しいリスナーの耳に届けられ、世代を超えて残っていく。
これもまた「私のものじゃない、私の歌」だ。
中でも「SWEET MEMORIES」は、完全にMay J.の歌になっていて興味深い。吉田美奈子とのデュオで知られるハモンドの名手・河合代介とのセッションは、互いに触発し合うことで、演奏が進むにつれて遥か高みに上り詰めていく。レコーディングはいわゆる“一発録り”で行なわれ、スリリングなスタジオの様子がDVD/Blu-Rayに収められている。生々しい音楽の歓びを目にすることのできる、とても貴重な映像なので一見を勧めたい。
また『Sweet Song Covers』のアナログ盤もリリースされるので、映像とは違った意味で“生々しい音楽”に触れることができるのも嬉しい。
僕は個人的には、村下孝蔵の83年作品の「初恋」が気に入っている。村下得意のフォーク・テイストの曲のMay J.バージョンのバックを務めるのは、現代のアコギの匠、押尾コータロー。タッピングや変則チューニングを駆使して、村下とはまったく違う「初恋」にアップデートしている。May J.は押尾のトリッキーなプレイを活かしながら、本来のエモーションを損なうことなく堂々と歌い切っていて聴きほれる。他にも、朝川朋之のハープのみで歌う「春よ、来い」も聴き応え充分だ。これらの曲も一発録りで、映像にも記録されている。
また山口百恵の「秋桜」 は、坂本昌之のアレンジによって完全にメロウなAORに生まれ変わっている。坂本は徳永英明などを手掛けていて、21世紀のカバーの意味を知り尽くしているのが心強い。
カバーシリーズ第1弾の『Summer Ballad Covers』、第2弾の 『Heartful Song Covers』より一段と進化&深化した『Sweet Song Covers』のMay J.を、良きリスナーのみなさんに大いに楽しんで欲しいと思う。
音楽評論家 平山雄一
現在と比べて圧倒的に文 字数の少ない歌詞で、存分に感情を伝えてくれる往年の名曲を、May J.は持てる力のすべてを使って表現する。
選ばれたのは、20世紀を代表するラブソングたちだ。
たとえば「RIDE ON TIME」のオリジナル発表当時、それまでの貧弱なバックに不満だった若いリスナーが、爽快なサウンドに乗って聴こえてくる日本語のポップスにどれだけ心を解放されたか。その解放感を、May J.と いうタイムマシンに乗って追体験するのが『Sweet Song Covers』なのだ。
“J-POP”という言葉は、80年代末に生まれ、1993年頃に一般に定着した。その“J-POP”の萌芽はすでに70年代にあった。当時、歌謡曲や演歌が席巻していた音楽シーンにおいて、ニューミュージックやロック、フォークの若いシンガーソングライターたちが次第に存在感を増してきていた。シンガーとして人気を集めていた彼らは、新しい感覚を持った作家としても注目され、アイドルに作品を提供するケースが増えていった。
今に連なるJ-POPの歴史は、ここから始まったのである。
May J.の『Sweet Song Covers』は、この時代観にピタリと合ったカバーアルバムだ。古くはシンガーソングライターの草分けの小坂明子の73年作品「あなた」から、J-POPの 認知直後の94年作品「ただ泣きたくなるの」(中山美穂)、「春よ、来い」(松任谷由実)までの13曲が収められている。
J-POPの起点となった70年代 から80年代にかけての音楽シーンには、新しい作家とともに、新しいミュージシャンの台頭があった。それまで徒弟制度だったスタジオ・ミュージシャンに代わって、ロックバンドやジャズ&フュージョンシーンから一流のプレイヤーがレコーディングに起用されるようになる。そうした状況になって初めて“サウンド”という言葉が一般リスナーの口にのぼるようになった。
日本に“サウンド”という言葉を定着させた立役者の一人が、山下達郎である。『Sweet Song Covers』の冒頭を飾る「RIDE ON TIME」のオリジナルは、達郎が手塩にかけて育てたドラムス青山純とベース伊藤広規でレコーディングされている。この2人はボズ・スキャッグスのバックで知られたバンド“TOTO”のリズムセクションと並び称された気鋭で、その後もMISIAの初期を支えた名人たちでもあった。
May J.の「RIDE ON TIME」 は、ドラムス山木秀夫、ベース高水健司で、共に80年代初頭のフュージョン界の重鎮である。2人はフュージョンの旗手、渡辺香津美バンドのメンバーだった。またピアノの中西康晴は75年 に17才で“上田正樹とサウストゥサウス”に参加した天才で、達郎や小沢健二のレコーディングも行なっている。
そして面白いのは、ギターの名越由貴夫だ。May J.の「RIDE ON TIME」のイントロで揺れる不思議なギター・サウンドに、「あれっ?」 と思ったリスナーがいるだろう。名越は、椎名林檎やCHARAのバックで活躍するギタリストで、90年代以降に生まれた非常にエッジの効いたプレイを得意としている。普通は達郎のサウンドと相いれないと思われがちだが、聴いてみると実にマッチしていて心地よい。この名越の起用という“冒険”は、ただハイクオリティーだけのカバーではなく、名曲をアップデートする意志をMay J.が 持っているということを示している。このクリエイティブ・マインドが、『Sweet Song Covers』の最大の特長と言っていい。
2曲目の「木綿のハンカチーフ」は太田裕美の76年のヒット曲。はっぴいえんどの ドラマーから作詞家に転身した松本隆の初期の代表作で、遠距離恋愛の男女のセリフが交互に展開される画期的な構成を持つ。今ではあり得ないシチュエーションの、ピュアなラブソングだ。おとなしく田舎で待つヒロインには松本の理想の女性像が反映されているが、歌手の太田はさばさばした江戸っ子気質で、そのギャップが成功につながったと言われている。
巨匠・筒美京平のポップなメロディが、スムーズな男女の歌い分けを助けている。
May J.もこの“歌い分け”に挑戦していて、明るく懐かし い恋愛観を表現することに成功している。
名曲カバーのポイントのひとつは、オリジナルとの距離感だ。オリジナルとすべて同じでは意味がないし、オリジナルと離れ過ぎても楽しみは 減ってしまう。
では『Sweet Song Covers』の場合はどうだろう。サウンドに関し ては前述のように“アップデート”に気が配られている。対してMay J.のボーカルは、独特のポジションを取る。オリジナルのシンガーの魅力と、May J.自身の持ち味の、ちょうど中間に位置しながら、奇跡のバランスで個性を発揮しているのだ。
May J.は非常に耳がいいので、オリジナルそっくりに歌うことができる。彼女はその能力を前提として、歌を組み立てている。たとえば「う・ふ・ふ・ふ」は、オリジナルのEPOにかなり寄せて歌っている。ただし、リスナーが「似ているな」と感じた瞬間、さっと彼女自身の歌い方に戻す。そのタイミングの良さは心憎いほどだ。一方で「木綿のハンカチーフ」では女子パートでは太田裕美に近く、男子パートでは太田と異なるタイプのボーイッシュな発声に切り替 えて自分をアピールする。この独創的なボーカルセンスは、カバーを多く経験するうちにMay J.が身に付けたもので、彼女のオリジナリティの源泉になっている。
「私のものじゃない、私の歌」という今年の彼女のキャッチコピーは、彼女のそうしたカバーに対する姿勢を指している。同時に、名曲たちはMay J.にカバーされることによって、新しいリスナーの耳に届けられ、世代を超えて残っていく。
これもまた「私のものじゃない、私の歌」だ。
中でも「SWEET MEMORIES」は、完全にMay J.の歌になっていて興味深い。吉田美奈子とのデュオで知られるハモンドの名手・河合代介とのセッションは、互いに触発し合うことで、演奏が進むにつれて遥か高みに上り詰めていく。レコーディングはいわゆる“一発録り”で行なわれ、スリリングなスタジオの様子がDVD/Blu-Rayに収められている。生々しい音楽の歓びを目にすることのできる、とても貴重な映像なので一見を勧めたい。
また『Sweet Song Covers』のアナログ盤もリリースされるので、映像とは違った意味で“生々しい音楽”に触れることができるのも嬉しい。
僕は個人的には、村下孝蔵の83年作品の「初恋」が気に入っている。村下得意のフォーク・テイストの曲のMay J.バージョンのバックを務めるのは、現代のアコギの匠、押尾コータロー。タッピングや変則チューニングを駆使して、村下とはまったく違う「初恋」にアップデートしている。May J.は押尾のトリッキーなプレイを活かしながら、本来のエモーションを損なうことなく堂々と歌い切っていて聴きほれる。他にも、朝川朋之のハープのみで歌う「春よ、来い」も聴き応え充分だ。これらの曲も一発録りで、映像にも記録されている。
また山口百恵の「秋桜」 は、坂本昌之のアレンジによって完全にメロウなAORに生まれ変わっている。坂本は徳永英明などを手掛けていて、21世紀のカバーの意味を知り尽くしているのが心強い。
カバーシリーズ第1弾の『Summer Ballad Covers』、第2弾の 『Heartful Song Covers』より一段と進化&深化した『Sweet Song Covers』のMay J.を、良きリスナーのみなさんに大いに楽しんで欲しいと思う。
音楽評論家 平山雄一